『グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略』

Li,Charlene and Josh Bernoff : Groundswell: Winning in a World Transformed by Social Technologies,Harvard Business School Pr. 2008(邦訳:伊東奈美子、『グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略』翔泳社、2008年)

【要約】
グランズウェルとは社会動向であり、人々がテクノロジーを使って、自分が必要としているものを企業などの伝統的組織ではなく、お互いから調達するようになっていることを指す。
この現象は単に存在するだけでなく、猛スピードで進化しており、企業の戦略責任者にとてつもなく大きな課題を突きつけている。
ただし、注目しなければならないのは、全ての企業がグランズウェルに対抗して、滅びの道を歩んでいるわけではないということである。グランズウェルに飛び込むことで、ビジネスを成功させている企業もある。
こうした企業はグランズウェルのテクノロジー人間について理解することによってビジネスを成功に導いている。
ビジネスを成功に導くためには、まず企業はテクノロジーについて理解しなければならない。もっとも、テクノロジーを考える時に本当に重視しなければならないのは、「関係」である。なぜなら、新しい方法で人と人をつなぐツールは、そうでないツールよりも短期間で広まり、月単位でビジネスに影響を与えることが可能になるからである。
次に企業は人間について理解しなければならない。企業はグランズウェルを深く理解するために、グランズウェルのメンバーをいくつかのグループに分類し、それぞれを突き動かしているものを分析する必要がある。なぜなら、グランズウェルに参加する度合いは人によって違うからである。人間を十把一絡げに扱う戦略は必ず失敗するのである。
しかし、ここでより根本的な問いは、人はなぜグランズウェルに参加するのかということである。この問いが重要なのは、この答えがグランズウェルの未来を決めるからである。
ただし、この問いに答えることは難しい。なぜなら、答えが無数にあるからである。
しかしながら、重要なことはグランズウェルに参加する全ての人々の動機を理解することではない。企業にとって最も重要なことは事業目標を達成することであり、成功を測定し、それがグランズウェルの戦略の成果だということを証明することである。

慶應義塾大学総合政策学部 川村真哉