The Social Construction of Technological Systems: New Directions in the Sociology and History of Technology

Bijker, Wiebe E., Hughes Thomas P. and Trevor J. Pinch (ed.) The Social Construction of Technological Systems: New Directions in the Sociology and History of Technology, The MIT Press, 1987.

【要約】
従来からの科学と技術についての研究論文には以下のようなものが存在する。
まず、科学的な知識も社会的に構成されるものであるとするもの。
次に、科学と技術の区別は社会的なものであり、科学と技術は共に社会的に構成されるとするもの。
さらに、イノベーションや技術の歴史、そして技術社会学を論じたもの。
ところが、近年の社会構成主義ではこうした考え方を個別に研究するのではなく、これらを統合して研究するアプローチが提供されている。それが、EPORとSCOTである。
まず、EPORとは相対主義の経験的プログラムというものである。ここでは、まず科学的な発見に対して解釈の柔軟性が与えられるが、その柔軟性には社会的な制限が存在するので、科学的な論争もやがて終結すると考える。しかし、終結のメカニズムというものは未だ達成されてはいない。
次に、SCOTとは技術の社会的構成というものである。ここでは、人工物の発展のプロセスが変化と選択の交替として描かれる。この考え方では、技術の発展過程を直線的なモデルとしてではなく、多方向的なモデルとしてとらえる。
EPORとSCOTには類似点もある。
まず、解釈の柔軟性についての類似性がある。EPORにおいてもSCOTにおいても、人工物に対する解釈の柔軟性が保障されていなければならないと考える。
次に、論争の終結・安定性についての類似性がある。人工物に対する技術的な論争を終結・安定させるためには、まず、人工物に関係する社会集団が論争上の問題が終結・安定したと考えることがポイントになる。次に、社会集団が持つ問題を再定義することによって、論争が収束・安定することがあると考える。また、特にSCOTにおいては、社会集団が置かれている文化的、政治的状況によって、彼らの規範や価値観が形作られ、そうした価値観等が人工物に対する彼らの意味付けに影響を与えていると考える。
社会構成主義においては、これまでのように科学と技術を明確に区別した上で研究するよりも、科学と技術を統合的に考えた上でそれを研究することに価値がある。そして、特に科学知識の社会学と技術の社会学を統合的に考えることで、それらは相互に利益を受けることが可能になると考える。

慶應義塾大学総合政策学部 川村真哉